私の会社、副業ダメだと人づてに聞いた。
申請をしたら副業OKと思っていたのに実際は違うみたい。
申請をしても断られるなら、上司にお願いするのは面倒。
こっそりすればバレないよね?
せっかく決心して副業しようとしているのに、本業の勤務先でNGのようである。
なぜNGなのかもよくわからない。
禁止されているわけでもなさそうなのに、理由がよくわからない。
同僚も上司もよくわかっていなさそうだ。
など、会社員の副業の取り扱いは、案外とわからないことだらけ。
大々的に副業をOKと言っている企業や、副業を受け入れている企業、
専門としている人事担当部署以外は、よくわかっていないことが実は多いのです。
「副業がNG」ではなく「副業の内容がNG」だったのかもしれません。
ダメだった理由を理解して、OKをもらう申請しましょう。
この記事でわかること。
・副業を会社が断る理由
・副業を内緒で行ってもバレないのか
・公的な根拠をもとにした、OKがもらえる副業申請方法
就業規則ではOKなのに、なぜ副業がダメなのか
副業がダメな理由
・公務員
法律違反となるためNG(国家公務員法第103条、地方公務員法第38条)
・会社員
本業へ集中してもらいたい。
長時間労働・過重労働を助長するため。
従業員の労働時間の管理が難しくなるため。
情報漏えいのリスクがあるため
禁止する理由でもっとも多かったのが、「従業員には本業に集中してもらいたいため」50.4%。
次に「社員の⻑時間労働・過重労働を助⻑するため」で43.1%、「労働時間の管理・把握が困難なため」が42.9%と、労働時間の管理の難しさがあげられました。
続いて「情報漏えいのリスクがあるため」32.5%となっています。
副業OKの企業で、実際に副業を行っている従業員が感じていることが、以下のグラフからもわかります。「休日の減少」「本業との時間管理が難しい」「本業に支障が出る」など、副業を禁止している企業の理由と同様の課題となっています。
どちらの会社が管理?労働時間と法定時間外賃金負担
副業をしている人が管理が難しいというのはわかるけど、
なぜ本業の会社が管理をするの?
プライベートなことだから関係ないと思うけど?
会社は法律に準じたの労働時間を管理しなければならないからよ。
労働時間や法定時間外賃金については、副業が「雇用契約」なのか「フリーランス」なのかで、内容が違います。
副業が「雇用契約」(派遣社員やアルバイト含む)の場合
厚生労働省「時間外労働の上限規制」「働き方改革」の実現に向けて-政省令告示・通達 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)によると、
法律上、時間外労働の上限は月45時間・年360時間。
臨時的な特別な事情がなければこれを超えることができません。
臨時的な特別な事情があって、労使が合意する場合、以下を守らなければなりません。
・時間外労働が年720時間以内
・時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満
・時間外労働と休⽇労働の合計について、「2か⽉平均」「3か⽉平均」「4か⽉平均」 「5か⽉平均」「6か⽉平均」が全て1⽉当たり80時間以内
・時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは、年6か⽉が限度
また、「時間外労働」と「休⽇労働」について、法律上の規定について掲載があります。
「所定」と「法定」の違い
引用:厚生労働省「時間外労働の上限規制」000463185.pdf (mhlw.go.jp)
・時間外労働については、⼀般的に考えられている「残業」と法律上の「時間外労働」が異なっている場合があるので注意が必要です。
いわゆる「残業」というと、会社で定めた「所定労働時間」を超える時間のことを指すと考える方が多いのではないでしょうか。
⼀方、法律上の「時間外労働」とは、労働基準法で定められた「法定労働時間」(1⽇8時間・1週40時間)を超える時間のことをいいます。
休⽇労働についても同様に注意が必要です。
いわゆる休⽇労働というと、会社で定める「所定」休⽇に労働した時間と考える方が多いのではないでしょうか。
⼀方、法律上の休⽇労働とは、労働基準法で定められた「法定」休⽇に労働した時間のことをいいます。
労働基準法では原則として、使用者は労働者に対して毎週少なくとも1回休⽇を与えなければならないとされています。このため、「法定」休⽇とは、1週間につき1⽇の休⽇のことをいいます。
要は、法違反の有無は「所定外労働時間」(残業)ではなく、「法定外労働時間」(該当の労働者の法令外時間)で判断されるということです。
そして、問題になってくるのは、どちらの会社が法定外労働時間の賃金分を負担するのか。
以下資料にあるように、「労働契約の締結の順に所定労働時間を通算し、所定外労働の発生順に所定外労働の時間を通算」となります。
よって、本業のみで1日8時間となると、副業企業では法定外労働の計算となってしまうこととなってしまうのです。
そして、副業先では短い労働時間ながらも、割増賃金を支払わなければならない可能性があります。
“ 時間外労働の割増賃金の取扱い
引用:「厚生労働省の副業・兼業の促進に関するガイドライン」000962665.pdf (mhlw.go.jp)
(ア) 割増賃金の支払義務
各々の使用者は、自らの事業場における労働時間制度を基に、他の使用者の事業場における所定労働時間・所定外労働時間についての労働者からの申告等により、
・ まず労働契約の締結の先後の順に所定労働時間を通算し、
・ 次に所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算することによって、
それぞれの事業場での所定労働時間・所定外労働時間を通算した労働時間を把握し、その労働時間について、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分のうち、自ら労働させた時間について、時間外労働の割増賃金(労基法第 37 条第1項)を支払う必要がある。”
また、正しく申告しない労働者を黙認すると、企業としては割増賃金の未払いや過剰時間の勤務を黙認することとなり、法令が守られないことにつながります。
この煩雑さが、副業を嫌う理由の1つとなっています。
フリーランスでの副業の場合
一方、フリーランスは法令上、取り扱いが違います。
フリーランスは副業先の会社と雇用契約を結んでいないため、上記の労働基準法が適用されません。
しかし、厚生労働省のガイドラインでは、フリーランスの場合でも就業時間を把握することを通じて就業時間が長時間にならないよう配慮することが望ましいとされています。
健康管理も必要。
時間・気力・体力のすべてに余力を持ったほうがいいですね。
フリーランスは、法律での縛りがないので自由度が高いです。
会社によっては、就業規則で副業の時間を「月に40時間」「月に35時間」など、制限していることもあります。
規定に詳細がない場合、フリーランスの方でも労働基準法に沿った副業プランを考えて提案をするといいでしょう。
黙っていれば副業はバレない?バレる?
会社が副業に気づくとき
必ずバレるとは言えないのですが、バレる可能性は少なからずあります。
以下、バレる場面と注意点です。
・住民税のお知らせでバレる(アルバイトの場合)
副業が給与で払われるアルバイトの場合、副業先での給与分にかかる住民税も合わせた金額で、本業の会社に住民税のお知らせが届きます。
その際、高額だと気づかれることがあります。
フリーランスの場合と違い、確定申告で「自分で納付する(普通徴収)」を選択して、副業分だけを分けることができません。
お住まいの自治体によって取り扱いが違うようなので、副業アルバイト分だけを普通徴収できるかお問い合わせしましょう。
・住民税のお知らせでバレる(フリーランスの場合)
本業と副業収入を合わせた収入で住民税が計算されます。
確定申告書で給与以外の収入について「普通徴収」を選択すると、副業にかかる住民税の通知は自宅へ納付書が届くことになります。
こちらも確定申告後に「普通徴収」になっているかを自治体に念のため確認するほうがいいでしょう。
・自分でうっかり。同僚や知り合いから報告される
会社が副業自体を禁止している場合は、自分だけの心に秘めておいたほうがいいでしょう。決して、ほのめかさないこと。
家族にも口止めをすること。
SNSのアカウントも身バレしないよう副業専用のものを作ったほうがいいです。
アルバイトの場合、どこで会社の人と出会うかわかりません。「会社から遠いから」「深夜だから」と油断をすると、見つかってしまうものです。
正社員が副業をするときに就業規則で確認すべき注意点
会社員の方は、会社の就業規則は必ず確認しましょう。
以下が、確認ポイントです。
・副業を認めているか、副業にかかわる規定そのものがないのか。
・「副業自体が禁止」なのか。「無断で行うことが禁止」なのか。
・どこから副業としているのか?
例)・趣味のブログにアドセンス広告を貼っているのは副業?
・メルカリで不要な日用品を売るのは副業?
・休日にスポーツの審判を行って謝礼をもらうのは副業?
収益の金額の多さではなく、内容や継続的な収入であることなども判断材料のようです。
・副業の時間や休日の制限
・明らかにNGとしている内容(同業他社での副業・深夜長時間にわたる勤務・風俗など)
厚生労働省 「モデル就業規則」では、以下のいずれかに該当する場合には禁止または制限することができるとあります。
1)労務提供上の支障がある
2)企業秘密が漏洩する
3)会社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある
4)競合により企業の利益を害する
このモデル規定に沿って、就業規則を設けていることが多いと思います。
守って当たり前のことですが、この4つもおさえましょう。
内緒にしていた副業がバレたときの罰則
就業規則違反となれば、罰則を受ける可能性があります。
黙って副業を行ったあげく、本業に支障をきたした場合は懲戒処分となることもあります。事前に申請を行い堂々と副業を行いましょう。
副業そのものが禁止されている会社は、まずは理由を確認しましょう。
小さな会社などでは、2018年以前の「原則、副業禁止」の就業規則から改正されていない可能性や、問い合わせた上司の認識が古いままである可能性があります。
特許技術流出防止や情報流出防止のために禁止、時間外労働の管理が生き届かないため禁止など、明確な回答が出た場合は、推奨できませんが、副業がバレたときのリスクを天秤にかけて、ご自身で判断となります。
副業の承認を得る方法
(公的な根拠を用いて、上司にプレゼンしよう)
会社が副業を禁止にしたいポイントをおさえて、断わられる理由を回避すればOK。
私の場合、以下の内容を話しました。
・理由:自分のキャリアを別で積みたいから。
・時間管理:本業で月20時間ほど残業があるので、副業は約20時間いないで行う。労働時間を通算しないフリーランスでの副業であるが、労働基準法に沿った管理を自主的に行う。
・内容:WEBライターをクラウドソーシングで受注。FPの資格を活かしたい。
ポートフォリオのために作成しているブログからも収益の可能性あり。
・勤務会社の名前を出さず、秘密は漏洩しない。名誉棄損・競合での利益害がない。
・就業規則・厚生労働省のモデル就業規則の副業の欄は熟読して理解をしている。
副業を行う理由は、それぞれ違うと思います。
しかしながら、「お金がほしいから」ということが本心であっても、
タテマエとして「今後のスキルアップ」「チャレンジしたい」というマインド面を打ち出したほうがいいでしょう。
また、副業を行うことで会社にプラスになるという提案も、マネジメント層の上司は面白みをもってくれます。
話をする際は、他社での成功例などのエピソードがあると話に深みが出ます。
交渉のための事前準備がされていることもプラスの印象を与えます。
以下、経団連掲載「副業・兼業の促進 企業事例編」の事例を元にした説明例です。
例)
「副業をしている企業の一例として、ライフネット生命さんの内容を経団連HP。
“現在(2021 年9月時点)、社員の約1割が複業を行っている。ウェブ関係の複業や講師業などその領域は幅広く、年齢も20 代~ベテランまで多様性がある。社員のエンゲージメント向上に直結することを肌で感じている。「複業を応援してくれることで、同社に対する信頼感や満足感が高まり、その分成果を出そうというマインドになった」、「今は複業に興味はないが、柔軟な働き方を重視する会社に対して好意的な印象を持っている」といった社員の声を多く聞いているという”
出典元:経団連 経団連:副業・兼業の促進 (2021-10-12) (keidanren.or.jp)
この内容を見て、柔軟性が高い働き方への取り組みが、すでに社員の1割が行っているということで、そのスピードに驚いたとともに、うちの会社でも可能だと感じた。小職の副業はささやかな内容であるが、会社でのエンゲージメント向上に寄与できると思っている」
同HPには各社の「実績と効果」が掲載されているので、ご自身がプレゼンしやすい企業様の例を用いて交渉材料にするとよいと思います。
従業員のエンゲージメントの向上は、多くの企業が抱える中長期的な課題の1つ。
実は、副業の交渉は難しくありません。
就業規則でOKを出している企業であれば、
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関する ガイドライン」に則っていること
プラス
会社にとってもメリット
という一押しで、承諾いただけると思います。
就業規則に副業の記載がない企業は、
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関する ガイドライン」のリーフレット000996735.pdf (mhlw.go.jp)を持って、「原則、副業・兼業は認める方向で検討することが適当」ということから交渉を始めましょう。
前例がないと尻込みをするものです。
厚生労働省のリーフレットでの話の後に、経団連掲載の事例の話を盛り込みメリット訴求をするといいと思います。
まとめ
・会社は労働時間管理などに懸念を持っているため、まずは副業にかける時間の目安を出すこと。形態としてはフリーランスで行うことがよい。
・副業を内緒で行うと、バレる可能性はある。ゼロにはできない。
・会社が副業にネガティブな理由をおさえると、OKがもらえる可能性は高い。
これから副業は広がっていくことと思います。
手続きを申し出ることは面倒なことですが、こっそりするより堂々と行いたいものです。
安心な就業環境を整えることが、自分の将来のための副業の一歩目です。